マサキの部屋

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特警ウインスペクター 第38話「選ばれた男」

レスキューポリスシリーズ第1作 特警ウインスペクター

特警ウインスペクターとは、平和を愛し友情を信じ、人の命を守るために犯罪に立ち向かう、警視庁特別救急警察隊のことである。

OPナレーションより

政宗一成氏のとても印象的な独特な語り口で幕を開ける本作。

特警ウインスペクター」はレスキューポリスシリーズ第1作として誕生。それから第2作「特救指令ソルブレイン」、第3作「特捜エクシードラフト」とシリーズ展開した。

ウインスペクターは捜査活動と人命救助を同時に行う警視庁の組織で、装備は基本的にレスキュー目的である。ヒーローものという性質上、威力の高い武器も存在するが抵抗する犯人にショック与え、戦闘不能させるなど殺傷目的で使用しない。どんな凶悪犯でもあくまで逮捕である。

主人公 香川竜馬(演:山下優氏)がクラステクターなる特殊スーツを着用し、ファイヤーとなる。ファイヤーは災害や戦闘などに対応しており、どんな危険からもその身を守ることができるが、クラステクターの長時間の着用は身体にかなりの負担をかけるため、ファイヤーとしての活動時間の限界は5分である。

香川竜馬の人命救助に全てを賭ける姿はとてもカッコいい。事件解決後にヘルメットを脱いだ時の汗だくになりながらも清々しい表情の竜馬は見ていて心地よい。

またアクションのキレも素晴らしく、非の打ち所がない魅力を持った主人公だ。

竜馬=ファイヤーの活動を主にサポートするのがサポートロイドのウォルター(声:平井誠一氏)とバイクル(声:篠田薫氏)と女性警察官の藤野純子隊員(演:中西真美氏)で、抜群のチームワークで事件を解決に導く。

そしてウインスペクターをまとめるのが正木本部長(演:宮内洋氏)。数々のヒーローを演じてきた宮内洋氏だからこそ、竜馬=ファイヤーを見守るポジションというのは物凄く説得力がある。

正木本部長は基本的に本部での捜査指示等が活動の中心だが、いざとなると現場で敵との立ち回り見せ、我が身をかえりみず危険にも飛び込むという非常に頼りになる本部長である。

レスキューポリスシリーズ第3作「特捜エクシードラフト」は第1作である本作と、第2作「特救指令ソルブレイン」との世界観に繋がりはないとされていたが、なんと「エクシードラフト」の番組終盤に正木本部長のみ登場する。改めてその存在の大きさを知らしめた。

(「ウインスペクター」と「ソルブレイン」は同じ世界観であり、「ソルブレイン」の本部長は引き続き正木本部長)

また、ウインスペクターには秘密捜査官として小山久子(演:小栗さちこ氏)が所属。普段は喫茶店「チャコ」を営んでいる。彼女の父親・小山正信捜査官(演:伴大介氏!)は殉職しており、正木本部長とは元同僚であった。元々、ウインスペクターという組織の構想、つまり捜査活動と人命救助を同時に行う組織の設立は父親の小山捜査官が描いていたものだった。

 

特警ウインスペクター」は基本的に一話完結である。東映の特撮番組には珍しく特定の組織との戦いではなく、怪人もほとんど登場しない。刑事ドラマやSF、あるいは両者を合体させたエピソード中心で、非常にバラエティに富んだ作風である。

ライター陣は杉村升氏、高久進氏、宮下隼一氏、扇澤延男氏、鷲山京子氏などが参加。本作には「特捜最前線」のリメイクエピソードも存在する。第13、14話には「特捜最前線」の紅林刑事役の横光克彦氏、第31話には津上刑事役の荒木しげる氏がゲスト出演しており、「特警ウインスペクター」には刑事ドラマイズムが随所に溢れている。

当時、特撮のイメージが下がっていたこともあり、「特警ウインスペクター」は香川竜馬を通して新たなヒーロー像を開拓した。

これだけはハッキリと言っておきますが、ヒーロー番組とは教育番組に外なりません!

見ている子供たちが、親と子の関係、兄弟との接し方、目上の人との関わり方など道徳全般を学んでいくものなんです。

さらば!怪獣VOW 宮内洋氏インタビューより

特警ウインスペクター」はまさにそれを体現した特撮番組であろう。

第38話「選ばれた男」

脚本 扇澤延男 監督 三ッ村鐵治

あらすじ

特命刑事が久子にマイクロフィルムを託して倒れた。マイクロフィルムを再生すると、政財界の影の仕掛け人・青木東洋率いる闇の組織が選別した人間を抹殺するという、殺戮計画を立てており、その選ばれた人間はなんと久子の学生時代の同級生松下昭一だった。久子は警護のために松下に接近するが、殺戮計画はすでに発動されていた・・・。

日本のための殺戮計画

今回は久子主役編である。そんな久子の同級生・松下を演じたのは吉田淳氏。吉田淳氏はこの世代の特撮ファンには馴染みであろう。「宇宙刑事シャイダー」では神官ポー、「仮面ライダーBLACK」では剣聖ビルゲニアを演じていたが、今回はイケてないセールスマンというキャラクターで、最後までそれがブレることはなかった。

日本のための殺戮計画を立てたのは青木東洋(演:村上幹夫氏)と元大臣や政財界のトップリーダーたちで、殺戮計画を実行に移すのは彼らを支持する構成員である。元大臣と政財界のトップリーダー役のなかに怪人のような声質の人物がいるが、それは怪人の声を担当した依田英助氏と丸山詠二氏が演じているからだ。

青木東洋達は日本にとって役に立たない人間をピックアップして殺戮の対象にしているのだが、その理由が顔が気に入らない、大学出で無職など理不尽極まりない。

青木東洋の組織の名称は存在しないので仮に闇の組織と呼ぶが、その闇の組織はまるでオカルト系の陰謀論を地で行っており、権力者による殺戮とはまさにその最たるものだろう。

闇の組織の網は至る所で張られており、事故を装ってトラックで突っ込んできたり、ライフルによる狙撃などかなり大掛かりだ。久子が松下の警護に付き、松下が狙われていることが確信に変わった頃、昼食のため食堂に行くのだが、久子は警戒心からその食堂にいるの全員がグルに見えてしまうシーンがある(実際にグルかどうかは不明)。その心理描写には闇の組織の怖さが存分に表現されている。

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松下は劣等感を抱えて生きており、久子にもイケてないタイプと認識されている。松下は久子に「先生はみんなには怒ったのに、自分だけは怒られたことがない。自分はいても居なくてもいい人間なんだ。」とこぼす。その松下がこういった形で"選ばれる"とは実に皮肉である。

だが松下もそれだけでは終わらなかった。社会ではイケてなかろうが、必死に生きている。

お前なんかどっちにしろ いてもいなくても同じ

そんな事言う世界なら ボクはケリを入れてやるよ

「ロクデナシ」

作詞・作曲 真島昌利

THE BLUE HEARTS

とばかりに怒りを持つ。

劣等感とは一度抱いてしまうと、なかなか拭うことはできない。さらに劣等感がある意味では人生の指標となってしまって自らの人生の可能性を狭めてしまう。例えるなら、カブト虫のオスが蛹の時期にツノが曲がってしまうと、成虫になっても真っ直ぐにはならないように。

スマートに生きるだけが全てではない。あらゆるもからはみ出しても、必死に生きることが大事。

生まれたからには生きてやる

「ロクデナシ」

まさにその通りだ。

特警ウインスペクター」という"教育番組"から改めてそれを学んだ気がする。

 

ロクデナシ

ロクデナシ

第38話「選ばれた男」が収録されている特警ウインスペクター DVD VOL.4

特警ウインスペクター VOL.4 [DVD]

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【参加資料】

特警ウインスペクター VOL.1〜5 DVD 解説書

帰ってきた怪獣VOW 怪獣VOWプロジェクト編(宝島社)

さらば!怪獣VOW 怪獣VOWプロジェクト編(宝島社)

 

 サカモト・マサキ (@unadultymovie) | Twitter