マサキの部屋

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特捜最前線 第107話「射殺魔・1000万の笑顔を砕け!」について

久しぶりに特捜最前線についての記事である。

今回語るのは第107話「射殺魔・1000万の笑顔を砕け!」

本作はDVD-BOX3巻に収録された人気の高いエピソードで、犯人が猟奇的かつトリッキーである。後に珍しくなる、犯人との銃撃戦が描かれたりとアクション要素も強い。そして主役の刑事は紅林と桜井の二人で、その二人は事件解決を巡って互いにぶつかり合う。その時の紅林のセリフが非常に「特捜最前線」らしい。犯人の予告した無差別殺戮が刻一刻と迫るという状況の中で特命刑事たちのドラマが描かれていく。そう、本作はアクションとドラマが両立した回なのだ。

あらすじ

第107話「射殺魔・1000万の笑顔を砕け!」

1979年4月18日放送 脚本 大原清秀 監督 佐藤肇

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女子高生がライフルで射殺され、「三條真弓を自殺させろ、要求が通らない場合は高田馬場駅前で無差別に射殺を行う」という犯行予告が特命課に届く。特命課は事態に備え高田馬場駅に待機していると予告通り、雑誌を読んで笑っていた青年が射殺される。射殺魔は片桐という男で、極度の被害妄想から笑っている人間を憎んでいるのだった・・・。

 

神代課長=二谷秀明氏は第97、98話撮影時の怪我のため不在。代わりに橘警部が特命課の指揮を取る。

射殺魔・片桐を演じたのは北見敏之氏。片桐は笑っている人間を恨み、射殺するというなかなか恐ろしい犯人である。おまけに特命課に犯行予告を送り、自らのことを語りつつ、特命課に挑戦表明する音声テープを残すなど、自己顕示欲が垣間見れる。それはまさに現在の劇場型犯罪を彷彿とさせる。そもそも片桐は特命課に「三條真弓を自殺させろ」というかなり無茶な要求をしている時点で、猟奇的な部分を窺わせている。また、逆探知対策として第三者を介して特命課に第二の犯行予告を送ったり、特命課が自宅に乗り込んでくることを予期し、改造モデルガンの罠を仕掛けておくという、知能犯的な部分も存在する。

片桐の憎悪の原点・三條真弓(演:下村節子氏)という女性は片桐がウェイターとして勤めていたレストランの元同僚のウェイトレスだった。真弓は以前、片桐と恋人の関係であったが、実は他のウェイター達とも関係を持っており、片桐は弄ばれていたのだ。

その後、真弓は三條というインテリの男(演:寺泉哲章氏)と結婚し、シドニーに移住。

片桐は失恋し、それと同時に客としてレストランに訪れた真弓とその婚約者・三條に嘲笑われる。片桐は元々ナイーブな性格で、二人に嘲笑われたのが引き金となり、他人の笑いが自分のことを嘲笑っているという被害妄想に取り憑かれ、精神錯乱。人の笑顔を憎むようになった。

その時の片桐のセリフが凄い。

「ひとりの人間が恋を失ったら、全世界はそのために泣くべきだ!!」

まるで文学者のようである。岩波文庫などで出くわしそうな言葉だ。

また、そのシーンの北見氏の演技が凄い。完全に目がイってしまっている。

片桐は事を起こすために、有り金をはたき射的訓練に没頭。今回の事件の第一の犯行、女子高生を射殺したのはその女子高生が自分を嘲笑ったのだと思い込んだからであった。

本作の主役のひとり桜井刑事は、特命課に復帰したてのため、かなり尖っている。服装は上下スーツではなく、カーキ色のシャツに革ジャンである。拳銃は日本の警察が使用していない、アメリカ製のコルトガバメント?を所持している。

桜井は第1話から在籍しているメンバーで、第52話をもって特命課に籍を残したまま、捜査のため渡米。一時的に特命課を離脱。その一年後、第103話で特命課に復帰。当初の桜井は特命課ナンバー2的ポジションのエリート刑事であったが、復帰時の第103話から目的の為なら手段を選ばないスキャンダル刑事に変貌していた。金を巻き上げたり、捜査のためなら女性と"そういった関係"を持つなど、かなりアウトな刑事である。そのためか、桜井の階級は警部だったが、復帰時に警部補に降格。

 

事態に備え、特命課は高田馬場駅前に待機していたが、予告無差別射撃で被害者1名を出し、片桐には逃走されてしまう。その後、片桐は特命課に第二の犯行予告を送り、今度は歌舞伎町の交差点で無差別射撃を行うと宣言。

桜井は第二の無差別射撃を食い止めるために、三條真弓にそっくりな、"ちょっとした知り合い"の女性(演:真弓と同じく下村節子氏)を防弾チョッキを着せておとりにし、隙をついて片桐を射殺する作戦を提案人命を危険に晒す桜井の提案は他の特命刑事たちの反対により、無事却下される。

そして、紅林は桜井に対して強引なやり口と、片桐をやたら、射殺、射殺すると言い過ぎだと非難。すかさず桜井は「片桐に同情したのか?」と言い返すが、紅林は「片桐にも人権はある。だが本心では八つ裂きにしてやりたい。でも自分達は刑事で、超えてはならない一線がある。片桐を裁くのはあくまで裁判所で、片桐を射殺することがあっても、それは時と場合がある」と反論。

この紅林のセリフこそ、「特捜最前線」の姿勢を表していると思う。

紅林のセリフは「罪を憎んで人を憎まず」という綺麗ごとではなく、ホシは殺したいほど憎いが、刑事としてのルールは最低限守らなければならないという、どんな凶悪犯であっても射殺して即解決にはしない、「特捜最前線」の番組ポリシーが存分に表れている。

特捜最前線」は拳銃との向き合い方はかなり慎重で、初期はあまりそうではなかったかもしれないが、「特捜最前線」で刑事たちが拳銃を発砲するということは、余程の事件に限ってであったと思う。

そう、「特捜最前線」は拳銃をただのアイテムとしなかったのだ。その姿勢こそ、「特捜最前線」が数ある刑事ドラマのなかでもオンリーワンの輝きを放っている所以であろう。

また、捜査方針を巡って刑事達が互いにぶつかり合う様は、「特捜最前線」の真骨頂と言える。特命課は互いにぶつかり合うことで、絆を深めて事件の解決を目指していく。

片桐の第二の無差別射撃の被害を食い止めるために、特命課は自分達が笑っておとりになる作戦を展開。自分たちの身の危険も顧みず、こんな作戦を展開してしまうのも、まさに「特捜最前線」らしい。私は以前、「特捜最前線」は刑事ドラマのなかでもオールラウンダー的な位置に属すると書いたが、本作はまさにそれで、さらには「特捜最前線」らしさが見事に両立した回である。

リアリティとドラマの狭間で濃いエピソードを連発した刑事ドラマ「特捜最前線」。約10年間にわたって放送され、多くの人に愛された「特捜最前線」の功績は、視聴者のみならず、後の東映ヒーローにも多大なる影響を与えるのだった。

 

第107話収録の単品 DVD

特捜最前線 BEST SELECTION VOL.10 [DVD]

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  • 発売日: 2013/02/21
  • メディア: DVD
 

同話収録のDVD BOX

特捜最前線 BEST SELECTION BOX Vol.3【初回生産限定】 [DVD]

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  • 発売日: 2007/07/21
  • メディア: DVD