マサキの部屋

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特捜エクシードラフト 赤いスペース・矢崎から見る、宮下隼一氏の世界観

今回も引き続き、メタルヒーローシリーズ「特捜エクシードラフト」から、赤いスペードの矢崎について語りたい。

赤いスペードは番組初期に複数回登場する、犯罪組織である(第3、4、7、8話)。

そんなスペードは第8話「スペード最終作戦」にて壊滅。1話完結という番組の性質上、複数回登場する組織というのは、特別な存在である。また、番組後半には現代の悪魔・大門巌率いる大門コンツェルンという強大な組織が登場するが、やはり赤いスペードは番組黎明期を盛り上げた重要な存在である。

スペード最終作戦

スペード最終作戦

  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: Prime Video
 

世界を股にかける犯罪組織の赤いスペードの首領の正体は不明。そのボスの右腕(No.2)の矢崎文三が組織の陣頭指揮を行っている。指のスペードのタトゥーがメンバーの証である。

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赤いスペードの反社会的行為

本拠地は日本である。

・赤いスペードのメンバー、ビル・岩城が起こした事件で、息子を失った父親の復讐心を利用、その父親に服役中の岩城を殺害せようと目論む。事件は無事解決したが、赤いスペードという組織の恐怖から、岩城は刑務所で自殺してしまう(第3話初登場)。

・療養所の経営立て直しを条件に、サイコパワーを研究させる(第4話)。

・日本開催の地球サミットに出席する各国の要人達のクローンを製造し、そのクローン達と本人達をそっくり入れ替えることで、世界を意のままに操ろうと企む。これが赤いスペードの最終作戦であった(第7、8話)。

 

赤いスペードは復讐を手伝うために、その父親に爆弾を内蔵したヒューマノイドを提供したり、サイコパワー研究やクローン製造など、その組織力は相当なようである。

 

赤いスペード・矢崎という男

ここから本題に入りたい。

赤いスペードのNo.2である矢崎はコートに帽子、しかも全身黒のコーディネートである。さらには金色のネックレスをしている。

格闘術を心得ているのか、隊長・隼人と互角の勝負を繰り広げる。そんな彼は身体に傷を負っても、すぐに治ってしまうという超人的治癒能力が備わっている。その能力が備わったは7年前からであったが、理由は不明。

また、脳裏に謎の少年の姿がよぎった直後、激しい頭痛に襲われる。ボスから処方された薬を飲めば、その頭痛はなんとか治まる。

矢崎「俺の中で何が起こってんだ!?」

矢崎はもしかしたら、自分が人間ではない怪物ではないかと、疑いはじめていた。

一方、エクシードラフトは隊長・隼人は潜入捜査によって組織の中枢に侵入、No.3まで登り詰める。

矢崎は隼人を信用し、自分の超人的治癒力と謎の頭痛のことを話す。隼人は矢崎の頭痛が普通ではないと伝え、病院に連れていくことを口実に矢崎をある場所に連れ出す。

そして、その場所には桂木本部長、耕作、拳、愛が待ち構えていた。

桂木本部長と矢崎の間に因縁があった。

矢崎はブラジル生まれの日系人三世で、幼少期は貧困に苦しんでいた。そんな矢崎はコカイン密輸組織のヒットマンとなり、7年前に桂木本部長に追われていたが、戦闘中に爆破に巻き込まれて、死亡したと思われていた。

しかし、探査衛星シムの分析によると、矢崎はクローン人間であることが判明。

クローン・矢崎の脳裏に現れる謎の少年は、オリジナルの矢崎の幼少期の姿であり、偶然その記憶がクローンの矢崎に備わってしまったのだ。

その事実を知ったクローン・矢崎は、組織に利用されていたと気づき、エクシードラフトを振り切って本拠地に向かう。それを追う隼人。組織に復讐せんとする矢崎と組織を壊滅させたい隼人の利害が一致、二人は共闘する。一気に胸熱な展開となる。

だが、二人の前に本物のヤザキ(脚本だとカタカナ表記)が現れる。ヤザキこそ、赤いスペードのボスだった。7年前の爆発の後遺症により、自力での歩行は不可能となり、さらには声を発するために人工咽頭を使用しなければならなかった。

ヤザキは自身の生い立ちを語る。

「人間であることを捨てなければ、そうしなければ生きていけないのなら、私は捨ててやろうと思った。そうして生きてやろうと思った。ビッグになってやろうと誓った。悪の権化として。」

また、ヤザキはクローン・矢崎が不完全なクローンであり、その寿命はとうに過ぎていることを非情にも宣告するのだった・・・。

本作はクローン人間・矢崎の悲哀と、隼人の人間ドラマが描かれる。

特捜エクシードラフト」はレスキューポリスシリーズ第3作であり、レスキューポリスシリーズは特撮と刑事ドラマの融合である。

本作は、特撮と刑事ドラマが見事に融合したエピソードである。また、本作=赤いスペードシリーズを執筆したのはメインライターの宮下隼一氏である。宮下氏は前作のレスキューポリスシリーズ、「特警ウインスペクター」と「特救指令ソルブレイン」のライターとして参加していたが、2作ともメインライターは杉村弁氏であった。

だが、「特捜エクシードラフト」にて宮下氏はメインライターとなり、それから「ビーファイターカブト」までのメタルヒーローシリーズのメインライターとなった。

番組後半、宮下氏は現代の悪魔・大門巌と天使・美香が繰り広げる、黙示録シリーズを展開。

本作の赤いスペードシリーズはクローンということでSF色強めだが、それに対し、黙示録シリーズは宗教色が強い。だが、その一方で1話完結のエピソードは刑事ドラマ色が強い。

その宮下氏は刑事ドラマにライターとしても参加しており、あの「特捜最前線」には宮下"潤"一時代から参加していた。

だから、宮下氏は私が見る作品では本当に馴染みの深い作家さんなのだ。

 

宮下氏の描いたクローン・矢崎という存在。その矢崎は身体の異変によって、自らの存在が人間ではない怪物かもしれないという怯えと、クローン=コピーで、しかも不完全であるという、残酷な運命に翻弄される悲劇が描かれる。

自己の存在への葛藤、まさに自己同一性=アイデンティティの揺らぎであるが、これらをそのまま持ち合わせたキャラクターが、後の宮下氏の作品に登場する。そのキャラクターこそ、私の一番好きなキャラクターであり、ある意味では小難しい本を読むきっかけになったと言っても過言ではない。それに関しては近々語ろう。

私にとって宮下氏の世界観が多大なる影響を与えているのだ。